【外食企業】予算作成手順と4つのポイント【経営企画】
経営企画部が最も頭を悩ませる仕事といえば予算の作成と管理に関することです。作業量もさることながら求められる数字の精度と否応なくやってくる納期も相まって、どうにか”やり過ごす”ことだけ考える担当者も多いのではないでしょうか。ここではあるべき予算の姿から始まり、レストランや外食企業にありがちな問題と課題、望ましい進め方について解説します。
大手外食企業の経営企画部を10年務め、中小企業診断士の資格も持つ著者が解説します。
目次
予算とは
事業の計画を数値で表したものが予算となります。
でも何のために?社長が作れというから?銀行や株主に要求されるから?確かに。
直接的にはそうでしょう。しかし、この人たちがなぜ予算を求めているのかといえば次の3つのことがあるからです。
- 将来のあるべき姿とその道筋を数値で捉えるため(冒頭に記した通りですね)
- 部門間の連携、整合性を確認できるようにするため
- 進捗と突き合わせることで軌道修正を図れるようにするため
しかし、現実に作られる予算というのはこの3つの要件を満たしていないことも多いように思います。
つまり、
- 事業のあるべき姿が無く、必要な数字、あるいは雰囲気と感覚の数字で作られた”当てずっぽう予算”
- 他部門のことを考えず自分都合を積み上げただけの”自己中予算”
- 進捗を追うにも時期や内容が吟味されておらず、”内訳は知りません予算”
本来、予算とは組織の一致団結と創意工夫を促す要石になるはずなのですが、逆に組織の分断と自己保身を促すきっかけになってしまうのです。
挙句に出てくるのが「予算不要論」「経営企画不要論」といったところでしょうか。予算にありがちな問題・課題
なぜ?どうしたら?の前にもう少し具体的に問題を見ていきましょう。予算にまつわる”声”としてこんなことがあがっていないでしょうか。そしてさらに、こんな問題が背景にあるようです。一元管理ができていない見ている予算が違う、数字が違う。社外、社内幹部、社内現場で予算が違う。複数の予算が必要なことはありますが、今、誰に、どの予算の話をしていて、それぞれの背景にはどのような違いがあるのか、少なくとも経営幹部内では明確に共有されていなくてはなりません。
共有できていない各部門が、現場が予算を知らない、どうにか集計して社長に報告したところで燃え尽きてしまう。本来なら行動に向かって組織の全てが内容を理解するところまでが予算作成の仕事です。
一貫していない高い目標はあるが裏付けがない、根拠がない、経費や人員、準備期間を考えていない。なぜ、どのようにその結果を作っていくのか、それを考えるところから予算作成は始まります。集計した数字が望む結果から大きく逸れているのなら、そもそもの方針から見直さなくてはなりません。
巻き込めていない言ったはず、聞いているはず、それでも「聞いてない」「知らない」が出てきてしまう。おそらく背景にあるのは”数字だけもらっても困る”ではないでしょうか。大きな方針はトップダウンで決めるのかもしれませんが、それを理解しいかに実現していくのかは、現場を巻き込みながら進めていかなくてはなりません。
時間がないとりあえず体裁を整えた予算を、担当者が期日までに表にして出す。急にやれと言われても時間がない、日々の業務が忙しくて予算まで手が回らない。先手を打って段取りを考え、日々の業務は貪欲に効率を求める、そんな姿勢で臨まない限り経営企画とは名ばかりでただの計算屋になってしまいます。
自覚がない社長自身が予算を尊重しない。丸投げして戻ってきた予算書を承認するだけでは無理のないことです。早いうちに巻き込み、進捗をこまめに報告していかなくてはなりません。
段取りが悪い人員数と人件費が合わない、出店数と投資額が合わない、他にもあると思いますが不確定要素が多かったりギリギリまで慎重な判断を要する内容では段取りが重要になってきます。早めに担当部門とのコミュニケーションをとり、リスクの検討、シナリオの検討を行っておかなくてはなりません。
PDCAがない予算は作りっぱなしで進捗の追い掛けがない、決算締めてからようやく予実差を見るけどどうしようもない。新たな期が始まる前に、どのような場で、どのような帳票で進捗を追っていくのか決めておかなくてはなりません。
当事者意識が薄い経営企画部門のミッションは予算を作ることではなく、予実差異をコントロールすることです。予算や実績の集計段階でつまづいていたら、それはまだ仕事も始まっていないということになります。残念ながら”計算は間違える”ものです。しかし、”計算を間違えづらい”仕組みや”間違いに気づきやすい仕組み”、”致命的な間違いだけはしない”仕組みには取り組むことができます。
考えていない細部にこだわり考えましょう。数値という自らの領域で細部にこだわる姿勢を見せられなければ永遠に現場の信頼を得ることはできません。
手段が目的となっている・責任感がない繰り返しになりますが、予算は経営方針、経営目標を実現するための手段の一つであって、それを作ること自体が目的ではありません。事業に、あるいは経営に貢献する予算とはどのようなものか、この問いから始めないといけません。
ビジョンがないこと飲食業においては、数字は数字を作りません。数字が作られるのはお客様とお料理と従業員で囲まれたテーブルの上だけです。ここから始めない限り、お店も会社も成長発展は望めないのではないでしょうか。
どのように予算を作成すべきか
問題はわかりました、課題もよく分かります、では何にどのように取り組めば良いのでしょう。ここでは大きく3つの段階と全体のスケジュール感についてまとめています。- 予算作成前段階の取り組み
- 予算作成プロジェクトの進め方
- 予算管理部門の業務課題
- スケジュール例
1. 予算作成前段階の取り組み
- 現状分析を行う
- 現状分析から来期方針を、来期方針から部門方針を作る
- 概算計画を作る
2. 予算作成プロジェクトの進め方
- キックオフミーティングを行う
- タスクを分解し割り振る
- リスクを書き出し評価する
- ステークホルダーに注意を向ける
3. 予算管理部門の業務課題
- 日頃より生産性の改善に努める
- 自らの役割を問い直す