【成長発展のために】外食企業の管理会計【3つの目的】
外食企業の成り立ちはいつの時代も1店舗の繁盛店から始まります。そこから徐々に店舗数が増え、授業員が増え、売上利益が増えていきます。しかしその過程で経営者はいくつかの違和感を抱くことになるでしょう。現場を見て、あるいは数字を見て、「何かが違う」と。店長の話を聞いて、お客様の評判を聞いても「思ったものと違う」と。はじめの頃は、店を見ても何が起きているのか手にとるように分かり、その場で直すことができたものがいつしか容易ではなくなってきます。自分で直接見て、聞いて話して把握のできる限界が訪れるのです。そこで導入を検討すべきが管理会計となります。個人が見聞きして把握するものに、数値という客観的な指標を補うことで、現状把握と問題発見、打ち手の進捗確認を容易に、広い範囲で、人の手を介しながら行うことができるようになるのです。ここではその管理会計とはどういったものなのか、大手外食企業の経営企画部を10年務め、中小企業診断士の資格も持つ著者が解説します。目次
管理会計と財務会計の違い
企業会計は一般に「財務会計」と「管理会計」に分かれます。「財務会計」は企業会計原則に基づき、決められた期日までに損益計算書や貸借対照表といった財務諸表を作成、開示するものです。これは税務署や銀行、投資家への説明のために作られますが、起業したその日から始めなくてはならないと言えます。一方で管理会計には決まった形はなく、期日も書式も任意のものとなります。こちらは経営目標の達成のために、専ら社内の経営管理のために作られるものです。「管理会計」は経営目標の達成のために作られますが、そもそも経営目標が売上高や利益高などの財務会計上の数値にある場合が多く、そのため用いる数値の多くは財務会計上の数値に関連したものとなります。そのため事業規模の小さいうちは財務会計の数値だけを追っていても経営管理が可能なのは確かです。しかし、規模が大きくなるにつれてそれだけでは十分と言えなくなってくるのです。財務会計は現場の動きを表したものではない
店舗数の少ないうちは、日々の現場の動きを経営者が自分の目で見ながら、財務会計の数値をみて判断できるものです。しかし、その目で追えなくなるほどの規模になれば結果の数値だけ見ていてもなぜそのようになったのかが分からず、直しようにもどう直していけばいいのか分かりません。財務会計は結果の数値でしかない
経営を行っていく上で必要なのはこれからどうなるか、このままだったら将来どのような結果を生むのか、また新たな手を打った時にどのような結果になるのかを知ることです。そのために過去の結果を表す財務会計の数値が必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。結果を生むのは必ず行動があってこそのものです。その行動を定量的に捉え、進捗を追うためにも管理会計が必要と言えるのです。管理会計の目的
財務会計の数値を基本としながら、現場の行動に即した定量的な指標、いわゆるKPIというものを取り込んだものが管理会計と言えます。またレポートの頻度は、財務会計上の期日に限らず、経営上必要な意思決定のサイクルに合わせて提出されるべきものとなります。より具体的にその目的と期日を述べると次のようになります。1) 計画と実績を一致させるため 日次あるいは週次でのレポート2) 経営資源の(再)配分のため 月次あるいは四半期でのレポート3) 将来の見通しを社外に説明するため 四半期あるいは年次でのレポート1) 計画と実績を一致させるため
日々あるいは毎週の計画を立てて実績との差異を追いかけていきます。入金、支払い等の財務会計の業務サイクルとは合わないため、もっぱらPOSや発注/納品のデータ、勤怠のデータに基づいてレポートを作っていきます。代表的な指標として時間帯毎の売上、客数、客単価と仕入れ高(率)、労働時間、人時売上高、人時客数が挙げられるでしょう。これらの指標に基づき、定量的に問題を発見し、現場に即した真因を課題とし、打ち手として活動計画を修正していくことで、計画と実績の一致をはかります。そのため、この目的でのレポートの対象は現場の従業員とその管理職が中心となります。とりわけ飲食店は毎日大勢のお客様が来店され、その都度調理、接客を行うことで売上、利益があがっていくものです。一度の契約で大きな売上を獲得するような業種ではないため、このように日々の数値を追うことが何より重要な業種と言えるのです。これが疎かになってしまうと、業績悪化に歯止めがかからず、現場の危機感も乏しいということになってしまいます。2) 経営資源の(再)配分のため
続いて月単位で計画と実績を検討していきます。1で触れたような現場に即した指標の結果とともに、月次決算に基づく財務会計上の数値を合わせて見ていきます。定量的な問題の把握を行うのは同様ですが、もしもそこで、既存の活動の延長では課題解決が見込まれない場合には、経営資源の配分、再配分が必要となってきます。そもそもの計画を一部修正しなくてはならなかったり、投資の計画を修正したり、あるいは組織体、会議体の変更、人事異動により解決を図る場合などが出てくるでしょう。そのため、このレポートの対象は部門長以上の幹部が中心となります。このような意思決定のない問題を放置すれば、現場はいつまでも、どれだけ頑張っても結果にならず徒労感だけが組織にまん延することとなってしまいます。3) 将来の見通しを社外に説明するため
このようにして毎日、毎週、毎月に業績を検討し続け、さらに四半期毎では今期あるいは数ヶ年の着地見通しを出していくことになります。当初の目論見通りであればその根拠を、計画と実績の差異が大きければ今後どのようにしていくのかを説明できなくてはなりません。このレポートの対象はまず経営者、そして経営者を通じて社外の株主、銀行や投資家に対して行われていきます。これらの社外関係者は経営に直接携わるわけではありませんが、経営に関心をもち、議決権の行使や貸付金、出資金を通じて経営に影響力を持つ人たちです。説明が不十分であったり不信感を持たれてしまえば、突然の要求を出され対話の時間も残されていないということになりかねないのです。管理会計には欠かせない、”予算作成”についてはこちらをご参照ください。【外食企業】予算作成手順と4つのポイント【経営企画】ここではあるべき予算の姿から始まり、レストランや外食企業にありがちな問題と課題、望ましい進め方について解説します。