五十嵐茂樹の情熱塾〜プロ店長養成講座【第12部】
第12部 サービスマネジメント(前編)
Service Management
このサービスのレベルが明確になるということは、自店舗が一体どのレベルのサービスをお客様に提供できているのかを、判断できるということでもあります。
抽象論から具体論へ、そして印象評価から段階評価への移行でもあります。
自店舗のサービスレベルの把握と、一つ上のサービスレベルを目指すことでお店の人気を高めてください。
サービス(Service)も商品
日本の飲食業界は、わが国の高度成長と共に成長してきました。
昔は、お店を開店すればお客様が押し寄せ、例えサービスが少しぐらい悪くても、どんどん儲かった時代です。
ところが、売り手市場から買い手市場に移行した途端、急激に景況が厳しくなってきています。
しかし、すべてのお店が悪いわけではありません。
ただ良いお店と悪いお店が、よりはっきりしただけです。
良いお店とは、当然ですがお客様から選ばれたお店であり、悪いお店とは、お客様から選ばれなかったお店のことです。
お客様は、お店に行って得をするからまた行くのであって、お店に行っても得をしないようでは二度と行くことは決してありえません。
そのお客様に得をした、と感じてもらえるものの一つがサービスです。
サービスの特徴
サービスの特徴は、外装や内装、それに料金などと、従業員の感じの良さや気配り、それに商品知識といったものを併せて売るところにあります。
つまり同じ商品を売ったとしても、お客様に得を感じてもらえることもあれば、逆にお客様に損を感じさせてしまうこともあるということです。
それは、たとえ同じ商品であったとしても、その中で働く人たちの、仕事の進め方の違いによって、大きくそのお店の価値が変わると言うことです。
これがサービスも商品ということです。
お客様のお店選びも、サービスを含めた価値観で決めているのです。
サービスが商品化し、サービスの良し悪しでお店の評判が決まり、そして次回の来店に結びつく決定的な要因の一つとなっているのです。
サービス業は「おもてなし業」
サービス業はサービス業は今さらいうまでもなく「おもてなし業」です。
良いお店、良い商品、それに「良いおもてなし」があって、初めてお店と言えることを忘れないでください。
この3つがすべて揃った時に、お客様から二度目三度目のご来店をいただけるのです。
そして、二度目三度目のお客様が増えてくると、お店が繁盛するのです。
そのためには、良いおもてなしをするための心と、その心をオペレーションで表現できることが重要になってきます。
そこでまず、サービスの基本的な考え方について説明します。
Hospitality(おもてなしの心)
ホスピタリティ(Hospitality)とは「親切な心のあふれるおもてなし」という意味があります。
では、”おもてなし”とは一体なんでしょうか?
そして、どうしたら、お客様に、”もてなしを受けた”と感じていただけるのでしょうか?
以下は参考例です。
- マナーの良い担当者が心を込めて対応してくれた。
- 些細な反応を敏感に感じ取ってくれた。
- 商品について豊富な知識を持ち、正確に伝えてくれた。
- 感動を与えるコミュニケーションをとってくれた。
おもてなしは、接客者の豊かな心と礼儀正しいマナーから生まれます。
お客様の感動が仕事の成果です。
お客様に二度三度と何度も来ていただけるのは、お店や商品が良いというのはもちろんですが、それだけでなく、「感じの良いスタッフだった」「気持ちの良い接客を受けた」など、従業員のおもてなしの心を感じていただけるからです。
皆さんの力で、ご来店いただいたお客様に感動していただき、リピーターになっていただきましょう。
サービスをする上での5つの気持ち
おもてなしの心とは、客様に対する温かい心づかいや思いやりの気持ちの表れです。
そこで何よりも大切になってくることが、お客様と自分との関係をしっかり理解し、そのことを仕事の心構えとして身につけることです。
当然ですが、あなたのお店を支えてくださっているのも、また、あなたの生活を支えてくださっているのも、全ては今ご来店いただいているお客様のおかげであることを肝に銘じていなくてはなりません。
お客様を大切にする5つの気持ち!
1. 親愛な気持ち「いらっしゃいませ」
親愛な気持ちとは、お客様を大切なお友達と同じように接する時の気持ちのことです。
あなたのお家に大切なお友達をお招きした時の気持ちを思い起こして下さい。
2. 素直な気持ち「はい」
素直な気持ちとは、あなたの人に対する心の表れです。
あなたがお客様に対して素直に接すれば、お客様は心地の良い時間を過ごすことができます。
そのためには常に元気よく「はい」と返事をしましょう。
3. 謙虚な気持ち「おかげさまで」
謙虚な気持ちとは、あなたを支えてくださる人に対する気持ちのことです。
我々の仕事は、お客様あっての仕事です。
お客様のおかげで仕事をさせていただいているということを忘れてはなりません。
4. 反省の気持ち「すみません」「申し訳ございません」
反省の気持ちとは、何か自分の過ちで問題を起こした時に、相手の人に対するお詫びの気持ちのことです。
我々の仕事にもミスはあります。
大切なことは素直に過ちを反省し、心からお詫びを言えるようになることです。
5. 感謝のな気持ち「ありがとうございます」
感謝の気持ちとは、何か人に良いことをしていただいた時に、相手の人に対する感謝を表す時の気持ちのことです。
お客様がお店に来てくださり、そしてお代を支払ってくださるから、お店が成り立ち、そしてあなたの生活も成り立っているのです。
これに勝る感謝はないことを忘れないでください。
お客様をお迎えする5つの心構え
忙しい仕事の中で、お客様への感謝を忘れている時はないでしょうか?
私たちの生活を支えてくださっているのは、お客様ということを思い起こし、一期一会の心でお迎えしましょう。
1. 「もしも、私がお客様だったら・・・」とつねに考える。
おもてなしとは、お客様にいかに喜んでいただくかということです。
お客様の立場と気持ちで、何をして差し上げると喜んでいただけるかを第一に考えましょう。
2. お客様に興味を持ち、細かい動作を観察する。
お客様がどんな方で、どんなサービスを求めているのか、興味を持ち考えることがとても大切です。
お客様が、今何を求めているかを動作から読み取り、敏感に対応しましょう。
3. お客様を好きになる。
お客様を好きになれば、お客様も私たちを好きになってくださいます。
お客様を好きになることで毎日の仕事が一層楽しくなり、その楽しく仕事に取り組む姿が、新たなお客様を呼ぶことにもなります。
4. 気持ちは早く、動作は優雅に・・・を心がける。
お客様には、スピーディーに対応しなければなりません。しかし、いくら急いでいるからといって、くつろぎの空間をかき乱すような動作ではお客様に不快感を与えてしまいます。
スピーディーに、しかもスムーズな動きで安心と安らぎを演出しましょう。
5. お客様には公平な応対をする。
常連のお客様を大事にするのは大切なことです。
しかし、同時に初めてのお客様もこれからお得意様になっていただくために、大切なお客様です。
すべてのお客様に公平の精神で応対しましょう。
サービスレベルを明確にする
おもてなしやサービスといったことを単に概念的に捉えるのではなく、そのレベルを段階的にする必要があります。
それは、サービスの質を、具体的に段階ごとで表現することです。
つまり、お店のサービスレベルを明確にすることであり、また、自分たちが一体どのレベルのサービスをお客様に提供できているのかを認識してもらうためです。
そして、もう一段上のサービスを目指すための目標の設定をしてもらうためでもあります。
お客様からいただいているお題には、商品であるお料理はもちろんのこと、お掃除やお店の雰囲気、それに、お客様に対するサービスも含まれていることを忘れてはなりません。
サービスの質を高めることは大変難しいことですが、難しいからこそ独自性になり、お客様の感動を得ることができるのです。
普通の人が特別なサービスをする
接客やサービスにおいて、最も優れていると評価されているホテルやお店は日本にもいくつもあります。
これは何も特別な旅館やホテル、それに、お店だからできるというわけではありません。
そこに共通するのは、フィロソフィーやクレド、それに、あるべき状態としての基準、そして、それらを可能にする教育訓練の制度です。
これには、見えざる経営資源と言われる社風や、人を計画的に育成する階層別研修の制度等が構築されていますが、人の育成はなんといっても現場で日々行われているOn-the-Job Training(実際の仕事の中で教育訓練)と、On-the-Job Communication(実際の仕事の中での医師の疎通)のレベルの高さです。
サービス・マネジメントとは、そんな具体的なサービスの質の向上を目指したもので、仕事を通じての教育訓練とコミュニケーションからなるものです。
Service Management 6 Steps!
サービスマネジメント6Stepsとは、お店でお客様に提供しているサービスレベルを段階ごとに明確にしたものです。
つまり、ステップ1であれば、初級のサービスレベルということであり、ステップ3であれば、中級のサービスレベルということです。
そして、ステップ6になれば最高のサービスレベルということです。
このサービスのレベルが明確になるということは、自店舗が一体どのレベルのサービスをお客様に提供できているのかを認識してもらうためでもあります。
抽象論から具体論へ、そして、印象評価からステップ評価への移行でもあります。
大変厳しい時代であるが、厳しい時代だからこそ、自店舗のサービスレベルの把握と、一つ上のサービスレベルを目指すことで成長するのです。
謝辞
故五十嵐茂樹氏の生前のご厚意に深く感謝いたします。
また五十嵐由美子様におかれましてはテキストの提供ならびに掲載の許可をいただきましたこと、厚く御礼申し上げます。