”われわれは貢献に焦点を合わせることによって、基本的な問題の一つについて解決に近づくことができる。混乱と混沌に対する対応である、それらのうち意味あるものと雑音にすぎないものとの識別である。
貢献に焦点を合わせることによって、原則とすべきものを知る。チームの形成を可能とする。
貢献に焦点を合わせることによって、組織の内部に引きこもることを防ぐ。
組織の内部における努力、仕事、諸々の関係から、組織の外部すなわち組織の成果に目を向けることができる。市場、顧客、地域の患者、一般市⺠など外部の世界と直接関係をもつことができる。
貢献に焦点を合わせるということは、つまるところ、成果をあげることに焦点を合わせることである。”
ピーター・F・ドラッカー(1909-2005) オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系 オーストリア人経営学者。「現代経営学」あ るいは「マネジメント」(management)の 発明者。
目次
貢献へのコミットメント
”手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える。”
多くの人は目標を知らず、組織の成果を知らず、したがって自らの貢献について考えることもしていないのでしょう。貢献について考えることがなければ必然的に自身の責任も明確にはならないのです。
目標や成果を知らなくても仕事をしていれば作業は目の前にあるわけです。貢献について知らなくても作業に対する努力、その作業に関わる自らの権限、自分が持つ組織や上司に対する期待については知っているわけです。
”これだけのことをやっている”
”権限がないからやりたいことができない”
”会社が、上司がもっと支援してくれるべきなのに”
こういったことに目を向けていても本当の成果はあげられません。
”自分は営業部長なのになぜ課長は言ったとおりにしないのか”
”課長だから〇〇万円までの決裁権限があるはずだ”
あげく”なぜまともに挨拶できないのか”
どれだけの肩書きや役職がついても、権限に目を向けているだけでは単に誰かが自分の部下であることを言っているに過ぎません。
それは貢献に焦点を合わせ成果を生み出す行動からは遠いものなのです。
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”自分の成果は何か”
ではなく
”この会社にとっての成果は何か”
と問うこと
”自分にできること、してきたことは何か”
ではなく
”会社の成果に対してどんな貢献ができるのか”
を考えることが重要なのです。
あとは全て取るに足らないつまらないことなのです。
三つの貢献
”自らの貢献を問うことは、可能性を追求することである。「どのような貢献ができるか」を自問しなければ、目標を低く設定するばかりでなく、間違った目標を設定する。何よりも、自ら行うべき貢献を狭く設定する。”
なすべき貢献には、3つの領域があるといいます。
第一の領域 直接の成果
これは企業においては売上や利益など経営上の業績です。 明確で分かりやすく知らされている企業もありますが、そうでない企業も多くあります。 多くの手間をかけて、間違った数字や時期の遅れた数字を出しているところもあります。 3つの領域の中では最も明快で分かりやすい成果なのですが、この直接的な成果ですら混乱していては組織の成果も期待しえないのです。第二の領域 価値への取り組み
顧客に提供される価値への取り組みです。 商品の品質改善を続けることで業界のリーダーシップを取ることもあるでしょうし、提供形態やサービス、居住性などの価値に対する取り組みもあるでしょう。 長期にわたる取り組みの中で、多くの試行錯誤を重ねなければならない領域ですが、これをおざなりにしては、直接の成果も怪しくなってくるものです。第三の領域 人材の育成
今日のうちに明日の人材を用意しなければ、企業は自らを存続させられません。 そして、自らを変革できない組織は明日の変化に生き残ることはできません。 主任の成功事例は店長の成功事例になりえません。店長の成功事例は地区長の成功事例とも異なります。 新たな地位に就いても自分を変化させていくことができなければ、これまでの貢献を続けていても失敗するのです。 自らが貢献すべき成果が変わり、貢献に値する行動が変わるのだということを忘れてはなりません。 あらゆる企業がこれら三つの領域における成果を必要としています。そしてこれらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐りやがて死ぬのです。貢献をもたらす人間関係
”対人関係の能力をもつことによってよい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や他との関係において、貢献に焦点を合わせることによってよい人間関係がもてる。”
「生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。」とドラッカーは言います。成果をもたらす関係があれば、失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはありません。
人当たりよく朗らかで節度とマナーを守る人がいたとしても、その関係が組織に貢献をたらさず生産的なものでなければその人は幽霊のようなものです。見える人には見えるし見えない人には見えない、たまにはっきりと姿を現すがよく見ると足がない、何かのきっかけで不運にも祓われてしまい二度と姿を見なくなった、ちょっと大きな会社になればそんな人の一人や二人見かけるものです。
逆に関係者全員に成果をもたらす関係であれば、失礼な言葉、間違った態度があっても人間関係を壊すことはありません。せいぜいが私的な食事や飲み会に誘われないくらいのものです。
会社に居場所を見つけてたいならば”良い人間関係”に焦点を合わせるべきではありません。”生産的で互いに貢献をもたらす人間関係”を築こうとするべきなのです。
貢献と4つの能力
”われわれは貢献に焦点を合わせることによって、コミュニケーション、チームワーク、自己開発、人材育成という、成果を上げるうえで必要な四つの基本的な能力を身につけることができる。”