中期計画の策定:3年後の”ありたい姿”から逆算する、データに基づいた成長ロードマップ

3年後の”ありたい姿”から逆算する、データに基づいた成長ロードマップ

はじめに

日々の売上を追い、目の前の課題を一つひとつクリアしていく。その積み重ねが、今のあなたの会社を築き上げてきたはずです。
しかし、ふと立ち止まって、こう思ったことはありませんか?

「このまま走り続けて、本当に3年後、5年後に、理想の会社になれるのだろうか?」と。

変化の激しい現代市場を航海するには、日々の緻密な操船技術(戦術)だけでなく、目的地を明確に指し示す「海図(戦略)」が不可欠です。
この記事では、経験や勘だけに頼る行き当たりばったりの航海から脱却し、データに基づいた『中期計画』という確かな羅針盤を手に、持続的な成長を実現するためのロードマップの描き方を解説します。


なぜ今、中期計画が必要なのか?:4つの推進力

中期計画は、ただの「努力目標」ではありません。会社の未来を創るための、具体的な4つの「推進力」となります。

【推進力1】 組織を一つにする「羅針盤」

ある30店舗展開の企業では、A地区のマネージャーは「客単価アップ」を、B地区のマネージャーは「新規顧客獲得」を独自に目指していました。どちらも正しく見えますが、全社的な方向性が定まっていなかったため、施策がちぐはぐになり、結果として大きな成長には繋がりませんでした。

このようなマネジメント間の方向性の違いは多くの企業で見られることです。
さらには、部門と業務ごとの活動の”時間軸”が異なることも、組織の力が一つになりきれない要因となります。

・店舗運営(店長): 目の前のお客様に対応し、長くても1年単位で計画を立てる。
・メニュー開発・食材調達: 季節の変動や取引先との交渉を見据え、少なくとも1年以上先を見て活動する。
・店舗開発・資金調達: 物件探しや融資交渉には時間がかかり、数年単位で動く必要がある。
・人事・採用: 一人前の人材を育てるには、さらに長い期間を見通した計画が不可欠。

このように、それぞれの部門が異なる時間軸で最善を尽くしていても、会社全体としての「3年後の目的地」が共有されていなければ、その力は分散してしまいます。 ある部門は東へ、ある部門は西へ、一生懸命に船を漕いでいるようなものです。

「3年後に売上を2倍にする」という明確なゴール(中期計画)を共有することで初めて、全部門のベクトルが同じ方向に向き、組織の力が一つの大きな推進力となるのです。

【推進力2】 変化の波を乗りこなす「舵」

近年、デリバリー需要の急増や原材料費の高騰など、外部環境は目まぐるしく変化しています。
中期計画で「デリバリー売上比率を20%まで高める」といった目標を掲げていれば、変化の波にただ翻弄されるのではなく、主体的に投資や人材育成を進め、むしろそれを成長のチャンスに変えることができます。

【推進力3】 成長を加速させる「エンジン(資金)」

「情熱は伝わるが、3年後にどうなっているのか具体的に見えない」というのが、金融機関が最も懸念する点です。
過去のデータ分析に基づき、「このエリアにこの業態を出店すれば、これだけの収益が見込める」というシミュレーションが示された中期計画は、彼らを納得させ、成長に必要な資金調達を可能にする最強の武器です。

【推進力4】 優秀な”クルー”を集め、育てる「採用・育成の指針」

計画を達成するために、どんなスキルを持った人材が、何人必要なのか。
中期計画は、採用活動や人材育成の具体的な指針となり、組織力の強化に繋がります。



中期計画策定の具体的な4ステップ

ここからは、郊外を中心に10店舗のレストランを展開する企業をモデルケースとして、具体的なステップを見ていきましょう。

  • ステップ1:現在地の正確な把握(現状分析)
    • データによる客観的な自己分析: これまで蓄積してきた「日次KPI」「予実」「メニュー」のデータを統合分析した結果、この企業には「強み:週末のファミリー層からの圧倒的な支持」「弱み:平日のディナータイムの集客力と利益率の低さ」があることが客観的に判明しました。
    • 現場の声に眠る”お宝”の発掘: 各店舗の店長ヒアリングを行ったところ、「平日の夜は、カップルや女性グループのお客様から『もう少しゆっくりお酒を楽しめるメニューが欲しい』という声をよく聞く」という貴重な定性情報が得られました。

  • ステップ2:未来の目的地を描く(計画策定)
    • ワクワクするゴール(目標)設定: 現状分析の結果と市場トレンドを踏まえ、「3年後に、店舗数を15店舗に拡大し、平日のディナー売上を現状の1.5倍にすることで、全社営業利益率を5%から8%に改善する」という、挑戦しがいのある具体的な数値目標を策定しました。
    • ゴールへのルート(戦略)立案: 目標達成のために、以下の具体的な戦略を描きました。
      ① 新業態開発: 平日ディナーの需要を捉えるため、ワインとタパスを中心とした「バル業態」を新たに開発し、これまで手薄だった駅前エリアに2店舗出店する。
      ② 既存店活性化: 既存の郊外レストランでも、アルコールメニューと前菜メニューを強化し、夜の客単価アップを図る。
      ③ 人材育成: 新業態の店長候補を既存店から育成するための研修制度を導入する。

  • ステップ3:航路(計画)を全乗組員に示す(コミュニケーション)
    • 誰がそれを知るべきか:何より大切なことは、現在地と未来への目的地を誰がどのように知るべきか考え、伝えることです。組織の全てのメンバー、それぞれの役割と立場に応じて現状分析、目標と戦略、そして行動計画について理解しなくてはなりません。
    • どのような言葉で何を知るべきか:次に考えるべきは、それをどのような言葉で、あるいは数値で伝えるかです。全体の目標とゴールはシンプルに、確実に、記憶に残るように、同じ言葉で共通認識とする必要があります。その上で、階層と役割に応じた内容を、より具体的に伝えていく必要があります。
    • いつどのような場で知るべきか:意外におろそかになりがちなのが、伝える場の設計です。全社会議や部門会議、1on1レビューなど、それぞれの特性に応じて、いついかに伝えるのかを決めなくてはなりません。また、間接的ではありますが、人事制度、評価制度の設計なども考慮すべき手段となります。

  • ステップ4:航海の継続と軌道修正(実行と管理)
    • 計画を日々の”タスク”に分解: 「バル業態の成功」という大きな目標を、「新メニューのABC分析」「ワインの利益率管理」「新規顧客のリピート率」といった日次・週次のKPIにまで落とし込み、現場の店長が日々のアクションを管理できるようにしました。
    • 定期的な”現在地”の確認: 半年後の予実管理レビューで、バル業態の売上は好調なものの、想定以上に原価率が高いことが判明。すぐにメニュー構成と仕入れ先を見直すことで、早期に軌道修正を行い、計画達成の確度を高めました。


中期計画の”落とし穴”:なぜロードマップは描ききれないのか?

課題1:データが社内に点在し、一枚岩になっていない
計画に必要なデータがPOS、会計、勤怠など複数のシステムに分散しており、統合的な分析ができない。

課題2:未来を描く専門知識と時間が足りない
日々の業務に追われ、市場分析や事業計画の策定にじっくりと向き合う時間と、専門知識を持つ人材が社内に不足している。

課題3:「計画疲れ」で実行がおろそかになる
計画を立てることに全力を注いでしまい、その後の地道な進捗管理や見直しが形骸化してしまう。


NauticalStarだからできること:データと経営知見を融合した”航海士”

私たちは、単なる計画策定の代行業者ではありません。貴社の”航海”に最後まで伴走し、目的地まで導く「航海士」です。

  • データに基づいた、実現可能な「海図」を作成します
    これまでのコンテンツで培ったデータ分析のノウハウを総動員し、客観的なデータに基づいた、現実的かつ実行可能な計画策定を支援します。
  • 「計画」から「日々の操船」までを一貫してサポートします
    計画を立てるだけでなく、それを実行・管理するための日々のKPI管理や予実管理の仕組みを構築し、計画を着実に推進できる体制づくりまでをサポートします。
  • ”One Team”での伴走支援
    経営コンサルタント、データサイエンティスト、データエンジニアが一体となり、計画策定から実行、そして次なる成長戦略まで、貴社の持続的な成長をワンストップで伴走支援します。


まとめ

中期計画は、立てるだけでは意味がありません。

データに基づいた精緻な「海図」を描き、日々の航海の記録(データ)を取り、常に現在地を確認しながら進路を修正し続けることで、初めて企業の成長を力強く推進する「真の羅貧盤」となります。

あなたの会社の3年後、5年後の未来を、私たちと一緒に描きませんか?

 

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